書類電子化の稟議書はどう作る?費用・効果・リスクのまとめ方

書類電子化の外注費を承認してもらうには、決裁者が「なぜ今やるのか、いくらかかり、何が変わり、うまくいかなかったらどうするのか」を一読で判断できる形にまとめることが大切です。数字は測った値と仮定を分けて書き、効果は見込みとして示します。この記事では、稟議書の見出し構成と記入例、現状の負担の示し方、複数案の並べ方、リスクと対策、実施後の評価計画までを順に説明します。費用の内訳や内製との試算方法そのものは別記事に譲り、ここでは社内の意思決定資料として組み立てる方法に絞ります。
決裁者が判断する項目
書き始める前に、社内の稟議規程で様式と決裁権限を確認します。金額によって決裁者や必要な合議先(経理・情報システム・法務など)が変わる会社が多いため、誰が何を見て判断するのかを先に押さえておくと、差し戻しを減らせます。
そのうえで、決裁者が判断に使う項目を見出しとして並べます。次の表は稟議書の見出しと記入例です。部署名や数量はすべて架空の例です。
| 見出し | 書く内容 | 記入例(架空の例) |
|---|---|---|
| 件名 | 何をどこへ依頼するか | 本社書庫の取引契約書類の電子化委託について |
| 現状 | 負担を測った結果と測り方 | 2週間の記録で書類の探索依頼が12件、うち2件は見つからず |
| 目的 | 何を変えたいか(一つか二つに絞る) | 契約書類の参照をパソコンで完結させ、書庫のキャビネットを空ける |
| 範囲 | 対象と対象外 | 2016〜2020年度の取引契約。人事書類は対象外 |
| 選択肢 | 比べた案と推薦案 | 現状維持・内製・外注の3案を比較し、外注を推薦 |
| 費用 | 支払額と社内工数を分けて記載 | 見積額(税抜・税込)と、社内に残る作業の時間 |
| リスク | 起こりうる問題と対策 | 原本・情報管理・不備・期限・費用超過の5点 |
| 実施体制 | 担当と確認者 | 推進:総務担当、内容確認:所有部署の課長、委託先確認:情報システム部門 |
| 評価 | 成果指標と見直し時期 | 納品1か月後と3か月後に探索時間を再測定 |
添付資料は、見積書、測定記録、作業仕様の案の3点を基本にします。本文には結論と根拠の要点だけを書き、詳細は添付に回すと読みやすくなります。
現状の負担を根拠で示す
「書類が多くて困っている」だけでは、決裁者は優先度を判断できません。保管費・探索時間・処理工数を、記録の取り方と期間を添えて示します。
| 項目 | 測り方 | 稟議書への書き方(架空の例) |
|---|---|---|
| 保管費 | 外部倉庫の請求書、社内書庫の面積 | 直近12か月の倉庫請求額の合計(請求書から集計) |
| 探索時間 | 依頼を受けてから書類を渡すまでを1件ずつ記録 | 2週間で12件、実作業の合計約5時間(担当3名の記録) |
| 処理工数 | 社内でスキャン・ファイリングしている時間を記録 | 過去分の社内スキャンは週2時間で、残量に対して進んでいない |
| 見つからなかった件数 | 探索をあきらめた件と、その後の対応 | 2件。取引先に写しを依頼して対応 |
測っていない項目は「未測定」と書き、推測値で埋めないことがポイントです。短期間の記録を年間に引き延ばす場合は、「2週間の記録を26倍した仮定」のように計算の前提を明記します。保管費を社内スペースまで含めて算定する方法は「書類の保管コストを見直すには?保管継続と電子化の比較方法」で整理しています。
複数案と費用対効果を比較する
推薦案だけを書くと、決裁者から「ほかの方法は検討したのか」と問われがちです。現状維持・内製・外注の3案を同じ前提で並べ、推薦する理由を示します。
| 比較項目 | 現状維持 | 内製 | 外注 |
|---|---|---|---|
| 外部への支払い | 保管費が続く | 機器を追加する場合はその費用 | 見積額(税抜・税込) |
| 社内工数 | 探索時間が続く | 前処理から格納まで社内で実施 | 対象選定・発送準備・受け入れ確認 |
| 完了の見通し | ― | 通常業務と並行できる時間で決まる | 見積もり時に確認したスケジュール |
| 残る負担 | 保管場所と探索の手間 | 担当者の作業時間の確保 | 原本の扱いの判断と受け入れ確認 |
3案の前提は、対象範囲、比較期間、税抜・税込の表示、社内の時間単価、原本を残す分の保管費の5点でそろえます。前提が違う案を並べると、金額の差が方法の差なのか条件の差なのかが分からなくなります。
費用対効果を書くときは、現金支出の変化と、工数を金額に換算した値を別の行に分けます。工数を減らせる見込みがあっても、人件費の支払いが同額減るわけではないためです。効果は「仮定に基づく見込み」と明記し、言い切らないようにしましょう。外注費の内訳は「スキャン代行の費用は何で決まる?料金の内訳と総額の比べ方」、工数の実測と試算の手順は「書類スキャンは内製と外注のどちらがよい?工数・費用・品質で比較」が参考になります。
Chatworkスキャン代行の料金は個別見積もりで、見積もりは無償です。公式ページでは、事前の見積もりで料金を明示し、追加費用が発生する場合も事前に案内すると説明されています。書類の量が多い場合などは訪問での見積もりも相談できます。
リスクと対策を書く
リスクの欄は、承認を得にくくするものではなく、決裁者の不安に先回りして答える欄です。起こりうる事態と対策、確認先を一行ずつ書きます。
| リスク | 想定される事態 | 対策の記入例(架空の例) |
|---|---|---|
| 原本 | 電子化後に原本が必要になる | 書類ごとに保存の要否を所有部署・経理に確認し、必要に応じて専門家や所管に照会する。原本の処理方針と時期は依頼前に委託先と合意する |
| 情報管理 | 社外での取り扱いに不安がある | 社内の情報区分に照らし、情報システム部門が委託先のセキュリティ体制を確認する |
| 不備 | ページの欠落や命名の誤り | 検品の範囲・期限と、不備があった場合の対応を契約前に確認する |
| 期限 | 作業中に書類が必要になる、移転に間に合わない | 送付前に参照予定の書類を洗い出し、希望時期を打ち合わせで伝える |
| 費用超過 | 量が想定より多い | 量の幅で予算を取り、追加費用の発生条件を事前に確認する |
Chatworkスキャン代行の公式ページでは、ISO/IEC 27001:2022の取得、生体認証による入室管理と24時間365日の監視カメラを備えた専用センターでの作業、スキャン後の原本は専門業者による溶解処理で破棄する流れが案内されています。原本を溶解処理するのか、その時期をいつにするのかは稟議の段階で社内の結論を出し、委託先との合意事項として記載しておくと安心です。保存年限など法令上の扱いは書類によって異なるため、稟議書では一律に書かず、確認した相手と日付を残します。
実施後の評価まで計画する
承認を得た後に「結局よかったのか」を説明できるよう、評価の方法も稟議書に入れておきます。測り方は、現状を測ったときと同じ定義にそろえることが条件です。
| 成果指標 | 測り方 | 担当 | 時期(架空の例) |
|---|---|---|---|
| 探索時間 | 導入前と同じ記録シートで2週間記録 | 総務担当 | 納品1か月後・3か月後 |
| 見つからなかった件数 | 同じ記録シートで集計 | 総務担当 | 同上 |
| 書庫の空き | 空いたキャビネットの数 | 所有部署 | 原本処理の完了後 |
| 予算と実績 | 請求額と見積額の差 | 推進担当 | 請求確定時 |
| 利用上の不便 | 利用部署への聞き取り | 推進担当 | 納品1か月後 |
結果は見直し時期に決裁者へ報告し、対象範囲を広げるか、仕様を直すか、ここで止めるかを判断します。期待した効果が出なかった場合も、原因と次の手を書いて報告すれば、次の稟議の根拠として使えます。
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